空間としてのあなた。空間としてのネコ。
小さい頃は神さまがいて
不思議に夢をかなえてくれた
【松任谷由実『やさしさに包まれたなら』】
あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
物語が語られると、わたしたちは普通、登場人物であるおじいさんやおばあさんに意識をフォーカスさせます。
そうすることで、登場人物の動き(体の動きや心の動き)について考え、彼らの体験している世界からあらゆることを感じていきます。
しかし、このときわたしたちはとても大切なことを見落としています。
それは、「あるところ」です。
あるところは、ずっとあります。
あるところは、登場人物が移動するたびに、動くたびに、変化を続けるたびに、同じように移り変わり、動き、変化を続けています。
おじいさんは「山」へ、おばあさんは「川」へ。
もう少し正確に見てみると、「おじいさんのいる山」へ、「おばあさんのいる川」へ、画面が移り変わっているのが観察できます。
あなたの意識の焦点が、物語の進行によって動かされているのがわかることでしょう。
でも、物語が「あるところ」は、ずっと同じようにしてあります。
ただその内容が色々な場面へと転換されていくだけです。
そしてこのとき、あなたも、物語の進行とは関係なく存在しています。
これは、とても当たり前のことですが、とても重要なことです。
あなたは物語の「全体」をただ見ているだけです。
あなたは物語のすべてを見ています。
すべてを見て、すべてを包み込んでいます。
さて、今わたしが語った物語についての話は、一旦忘れてください。
わたしたちは現実について語らなければなりません。
現実について語らなければ、あなたが苦しみから解放されることも決してないでしょうから。
これからちょっとおかしなことを言いますが、あんまり考えすぎないでくださいね。
考えることで、新しい何かを理解するのではなく、ただ聞くことで、今まで信じてきた古い何かが溶けていく様子をただ見ていてください。
では、はじめますね。
あなたは見ている物です。
あなたは聞いている音です。
あなたは空間です。
あなたは見ている物、聞いている音、感じているすべてを、包み込んでいる空間です。
あなたは肉体ではありません。
あなたは人間ではありません。
そういう風に、感じるように、いつも錯覚をしているだけです。
とはいっても、あなたはイスやテーブルでもなければ、声やメロディーではありません。
あなたは一部の世界ではなく、世界の一部でもありません。
しかし、あなたの中ですべてのことが起こっています。
あなたの肉体も、人間としてのあなたも、あなたの中で起こっていることの一つです。
さて、わたしが先ほど語った物語についての話を、ここで思い出してください。
あなたは世界という物語を読まれている読者です。
あなたは物語の登場人物ではありません。
「誰か」が、あなたに物語を読んでいます。
そして、あなたは頑なに、自分が登場人物の一人にすぎないのだと信じて疑いません。
それは、それでいいのです。
物語は、泡が水に溶けるように、静かに消えていくことになっているのですから。
何も心配いりません。
「あるところ」は、今もあります。
それがあなたです。
あなたに物語を読んでいる「誰か」はエゴです。
それは、本当のあなたではありません。
彼はマジシャンであり、詐欺師であり、魔法使いであり、悪魔であり、嘘つきであり、幻想です。
その人の話は、とても魅力的ですが、真実はもっと魅力的です。
わたしは、真実を語ります。
わたしは、信じていることを語ります。
いつもそうしているように、あなたの周りを見渡してみてください。
世界が見えますよね?
あなたの肉体の目で、世界を見ているという確かな感覚がありますよね?
そこで、少し、全体を見てみてください。
このときできれば、視覚だけではなく、あらゆる感覚に意識を集中させてみてください。
あなたの人生という物語は、今も語られていますが、それを一旦脇において、自分が「あるところ」にいるということ、自分は本当は空間なのだということについて、考え、感じ、身を委ねてみてください。
不思議な感覚がやってきませんか?
無理はしなくて大丈夫ですよ。
何も感じなければ、それもまた正解なのですから。
でも、この不思議な感覚を、あなたは何度となく体験してきたはずです。
これを体験していない人は一人もいません。
この不思議な感覚こそが、本当のあなたからの呼びかけであり、神さまからの声なのです。
あなたはいつも愛されています。
大切に大切に守られています。
愛は不思議なものです。
それがあんまり不思議なので、言葉で伝えるのが難しすぎるのです。
初めて月を見た日のことを、覚えていますか?
初めて人を好きになった日のことは、どうですか?
初めて、世界について、人生について、疑問に思った日のこと。
覚えていますか?
愛が、いつもあなたを呼んでいます。
あなたを愛しています。
あなたは必ず救われます。
本当はすでに救われています。
全く新しい、別の世界の見方があるのです。
空間としてのあなたが、あなたの宇宙を癒やしていきます。
あなたの宇宙で、起こるすべてを、許してください、愛してください。
大丈夫です。
ほんとに、何もしなくていいんです。
自然に自然に生きていれば、自然に自然にわかっていくから、溶けていくから。
リラックスして、どんなことに対しても深刻にならず、気をゆるめて、笑顔でいてください。
できれば、感謝をしていてください。
その方がずっと楽しいからです。
美しくないように見える世界の中に、隠された美しさを見つけてください。
全体を見てください。
全体として存在してみてください。
空間としてのあなたを愛し、慈しみ、微笑みの中で、安らぎの中で、温かいひだまりの中で、くつろいでいてください。
世界は消えて、人生は消えて、愛が、神さまの愛が、あなたとして、輝いていきます。
あなたの生きる毎日が、すべてを包みこむ愛となりますように。
愛と光を。